教員として培った力を広げる スクール外活動が拓くキャリアパス
教員としてのスキルを再認識する
日々の学校現場では、授業準備、生徒指導、保護者対応、部活動指導、校務分掌など、多岐にわたる業務に追われています。これらの業務を通して、教員は意識せずとも非常に多くのスキルを磨いています。例えば、生徒や保護者、地域住民とのコミュニケーション能力、多様な意見をまとめるファシリテーション能力、限られた時間で情報を整理し伝えるプレゼンテーション能力、課題を発見し解決策を企画・実行する力などです。
これらのスキルは、実は学校という場を離れても通用する、非常に汎用性の高いものです。しかし、多くの教員は自身のスキルを「学校の仕事」に限定して捉えがちかもしれません。自身のキャリアパスについて考える際も、管理職への昇進や異動といった学校内の変化を主に想定している方も多いのではないでしょうか。
この記事では、教員として培ってきた力を学校「外」で活かすことの意義と、それが自身のキャリア形成にどう繋がるのかについて考えてみたいと思います。
なぜ学校外での活動が教員のキャリアパスに繋がるのか
学校外での活動は、教員自身の専門性を深め、キャリアの選択肢を広げる多くの機会をもたらします。
まず、学校という組織を離れて外部の世界に触れることで、視野が大きく広がります。教育現場の「当たり前」が、外部ではそうではないことを知ったり、異なる分野の課題解決アプローチを学んだりすることができます。これにより、教育現場を客観的に見つめ直し、新たな視点やアイデアを得ることに繋がります。
また、地域のNPOや企業、他の分野の専門家など、学校とは異なるバックグラウンドを持つ人々と連携する経験は、コミュニケーション能力や問題解決能力をさらに向上させます。多様な価値観を持つ人々と協力して一つの目標に向かうプロセスは、学校内でのチームワークとは異なる学びがあります。
自身の教科指導や生徒指導に関する専門性を、学校外の研修会や勉強会で発表したり、教育系メディアで発信したりすることも、自身の専門性を客観的に評価し、深める機会となります。また、学校では得られない、プロジェクトマネジメントや特定の技術スキルなどを外部の活動を通して習得することも可能です。
これらの経験は、教員としての現在の仕事に還元できるだけでなく、将来的にキャリアチェンジを考えたり、自身の専門性を活かした副業・兼業(地方公務員法上の兼業規制には留意が必要であり、詳細は所属の教育委員会等に確認が必要です)を模索したりする際の重要な足がかりとなります。
具体的な学校外での活動例
多忙な日常業務の中で、どのように学校外での活動を取り入れられるのでしょうか。様々な形がありますが、いくつか例を挙げます。
- 地域の活動への参加・連携: 教育関連のNPOの活動に参加する、地域の課題解決プロジェクトに関わる、地域のイベントでボランティアとして関わるなど。学校と地域をつなぐ視点も養えます。
- 教育関連のネットワーク: オンライン・オフラインの教育系コミュニティに参加し、他の学校の先生方や教育関連企業の担当者、研究者と交流する。情報交換だけでなく、共同プロジェクトに発展する可能性もあります。
- 自身の専門性を活かした発信や活動: 得意な教科や生徒指導のノウハウについてブログやSNSで情報発信する、地域の公民館等で子供向け・大人向け講座を企画・実施する(兼業規定に注意)。
- 研修会やセミナーへの参加・企画: 興味のある分野の外部研修に参加するだけでなく、自身の学びや経験を共有する研修会を企画・運営する。
- 教育系スタートアップ等との連携: 新しい教育ツールやサービスについて、教員の視点からフィードバックを提供するテスターやアドバイザーとして関わる。
これらは一例であり、自身の興味や時間、エネルギーに合わせて様々な関わり方が考えられます。
多忙な中でも始めるためのステップ
「忙しくて、そんな時間はとてもない」と感じる方も多いでしょう。しかし、最初から大きな活動に関わる必要はありません。
まず、自身の興味や、教員としてさらに磨きたいスキル、あるいは「学校の外ってどうなっているんだろう?」という純粋な関心から、情報収集を始めてみましょう。教育関連のニュースサイト、SNS、地域の広報誌など、アンテナを立ててみることからスタートです。
次に、小さな一歩を踏み出してみましょう。例えば、興味のある分野のオンラインセミナーに一度参加してみる、地域のイベントにボランティアとして単発で関わってみる、教育系SNSで情報発信している人をフォローしてみるなどです。
大切なのは、自身の現状の多忙さを踏まえ、無理なく続けられる範囲で始めることです。最初から多くの時間を割く必要はありません。少しずつ関わる時間を増やしていくことも可能です。
また、学校外での活動について、信頼できる同僚に話してみたり、校長先生など管理職に相談してみたりすることも有効です。活動の内容によっては、学校の教育活動に還元できる可能性もあり、理解を得やすくなることもあります。
そして、学校外での活動を通して得られた経験やスキルを、意識的に記録・整理してみてください。どのような活動にどれくらい関わり、そこで何を学び、どのようなスキルが身についたのかを可視化することで、自身のキャリアをより明確に捉えることができるようになります。
スクール外活動が拓く未来
教員という仕事は、子供たちの未来を育む非常にやりがいのある仕事です。同時に、教員自身のキャリアもまた、多様な可能性を秘めています。
学校外での学びや活動は、教員としての専門性をより多角的な視点から捉え直し、自身の市場価値を高めることに繋がります。それは、学校という組織内でのキャリアアップに直接結びつかない場合でも、自身の働きがいや自己肯定感を高め、教員という仕事への新たなモチベーションを生み出すことにも繋がるでしょう。
また、外部での経験や人脈は、生徒たちの多様な進路選択を支援する上でも大きな力となります。生徒たちに、学校の中だけでは得られないリアルな社会の情報を伝えたり、様々な分野で活躍する大人と繋げたりすることが可能になるからです。
教員として培った豊かな経験とスキルを、学校の中だけに留めず、積極的に外の世界と繋げていくことは、自身のキャリアを主体的にデザインし、未来を切り拓くための強力な武器となります。ぜひ、ご自身の興味や関心から、一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。